寒造り 日本酒は寒い季節に造られたものほどおいしいとされている。
十一月頃から翌年三月頃までの寒の時期に一年分の酒を造ることを寒造りという。
酒は腐敗しやすいため、元来、一年中醸造して販売されていたが、
江戸時代に米価格安定のために、米の端境期にあたる九月・十月頃の酒造が禁止された。
それ以後は寒造りが習慣化し、寒のうちに造った酒が一年を通して販売されるようになった。
また、寒造りの酒が夏を越して完熟し、風味が増すことを「秋上がり」という。
速醸もと
現在の酒造りの主流となっている方法は、速醸もとは「乳酸速醸もと」の略で、
最初から精製した乳酸を加えて短い日数でもと造りをする。約2週間でもとが完成する。
生もと仕込み
もと造りの方法のひとつで、江戸時代に完成した昔ながらの手法。
まず、他の有害菌の繁殖を抑えるために自然の乳酸菌を育て、酵母の繁殖を助長する。
やがて乳酸菌自身も自分の出した菌によって自滅し、優秀な酵母だけを残す。
生もとは濃厚な清酒の醸造に適し、「山卸し」という非常にきつい作業を伴う
山廃仕込み
生もと造りの「山卸し」作業を廃止した「山卸し廃止版」の略。
◆山卸しとは◆厳冬期の深夜に蒸米、米麹、仕込み水をすり潰す作業のこと。
酒母(もと)を造る段階で通常の二倍の日数をかけてゆっくりと育て、米麹の酵素力により蒸米を分解していく。
ふくらみとコクがありキレとさばけの良い酒ができあがる。
山廃造りには原料米に柔らかさが求められる。
仕込み水
酒の味を左右するのが米と水。特に水は日本酒の80%以上を占める重要である。
リンやカリウムの多い硬水で仕込むと辛口の酒に、軟水で仕込むと甘口の酒になりやすい。
有名な仕込み水として灘の「宮水」(硬水)伏見の「伏水」(軟水)がある。
三段仕込み
仕込みの掛け米(もろみを造るときに加える蒸米のこと)は培養酵母の許容範囲に合わせ、
一度に入れずに分けて加えるが確実に醸酵させるために三回に分けて仕込むことが多い。
これを三段仕込みという。
投入する掛米の量は、一回目(初添え)を一とすると二回目(仲添え)はその倍、
三回目(留添え)は三倍というように量を増やし、一日に一回ずつ加えていく。
初添えと仲添えの間には「踊り」と呼ばれる一日の休養期間がある。
通常三回に分けて仕込む掛け米を四回に分けると四段仕込み、
六回に分けると六段仕込みとなり甘口の酒を造るときなどの手法として使われる。
原酒
一般の清酒はもろみを絞った後、水を加えてアルコール度を調整して出荷されるが、加水調整しない酒を原酒という。
二十度程度の高いアルコール度数と濃醇な味わいが特徴。オンザロックや水割りで楽しめる。
生酒
貯蔵時の火入れもびん詰め時の火入れも行わない清酒。びん詰め時のみ火入れしたものを生貯蔵酒という。
爽やかでフルーティーな味わいが特徴。
生一本
単一の製造場だけで造られた純米酒。
貴醸酒
仕込み水の代わりに酒を使って醸酵させた酒。甘口で、冷やで飲むとおいしい。
新酒
搾りたての全く熟成させてない酒。新鮮で味は荒削り。十二月頃から二月頃に一般に出回る。
古酒
三年以上長期熟成低温で熟成させた酒。芳醇な風味が出る。
味は中国の老酒に似て、色は熟成の度合いにより黄金色から褐色に近い色のものまである。
古酒の中でも五年以上ねかしたものを「秘蔵酒」、十年以上の熟成期間をおいたものは「大古酒」という。
樽酒
木の樽で貯蔵し、この香りをつけた酒。
濁酒、どぶろく
もろみの状態のままで蒸米や米麹の形がそのまま残っている酒。
古くからの神事のときに限りごく少量の醸造が許可されている。
にごり酒
もろみの状態のままの酒が「濁酒」「どぶろく」。
にごり酒はもろみとなった段階で蒸米や米麹の粒を細かく砕いて、目の粗い布で漉して火入れして造った清酒のこと。
形状はどぶろくに似ている。
とくに火入れしていないにごり酒は酵母や酵素が生きているので炭酸ガスが生じるため「活性清酒」という。
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